アスキー・メディアワークス 英語&海外文芸 編集者ブログ

2011-10-12 17:38:28

クドーの日記

クドーの事件簿 その14

大昔に月刊アスキー誌上で連載していたクドーの事件簿、再録篇の第14弾です。ですので、書いてあるネタがいつも古いですが、すみません。

■ゲームと人類の変容


 無性に脳がゲームの刺激を欲しがる時期がある。といっても私の場合、やりたいのはRPG(ロール・プレイング・ゲーム)ばかりなのだが、どうしてこんな体になってしまったのか、自分でも少し戸惑ってしまう。いや、これは私個人の身にばかり起こっている現象ではなく、感受性豊かな10代のころからゲームに慣れ親しんできた世代に共通の、ある種、革命的な人体の変容なのではないか、とやや空恐ろしくもある。
 現にASCIIの私の同期なども、愛する新妻をほったらかして、暇さえあれば、ゲームばかりしている。独身の連中も、たまに女の自慢話をしているかと思うと、果たして、恋愛シミュレーションゲーム内での話だったりする。つくづく、女性よりもゲームが好きなのだ。しかし、ゲームでは子孫は残せない。やはり生身の女性が好きで好きでたまらないようでないと……。これは人類全体にとってゆゆしき事態と言えよう。なぜなら、子孫が増えなければ、ゲームクリエイターも減少してしまい、だんだんゲームが発売されなくなるだろうからだ。それは困る。


 最近の幼児は、学校に上がる前に、ドラクエやポケモンなどをプレイする過程で字を覚え、計算も覚えてしまうのだという。現にそうした実例を私はいくつも知っている。たとえば、庶務の村上という女性の娘さんだ。よく考えてみると、実例はそれしか知らないが、しかし1件でも実例は実例である。たいへんなことである。
 RPGの世界では、どんなメッセージが表示され、手持ちの金額内でどんな武器や鎧、アイテムを買うかが死活問題となる。3歳だから計算できまちぇん、字も読めまちぇん、エーン、などと甘ったれた赤ちゃん根性では生き抜けない世界なのだ。依存心さえ捨てれば、イクラちゃんだって、即座に字も計算も覚えられる。今まで、幼児と呼ばれる人達が、いかにふざけた精神構造でのほほんと過ごして来たかが、RPGにより暴かれる日は近い。


 私はパラノイアチックな性格なので、一度始めると寝食を惜しんで1日20時間はRPGに没頭する。4~5日もその状態を続けると、外に出たときに、現実の街が3Dポリゴンで描かれ、スクロールしているように見えてくる。そして、気づくと、「すげ~解像度だなぁ。いったい何億ポリゴンだ? プラットフォームは何だ?」などと考えている。ふと鏡を見れば、「すげぇなぁ。俺の髭ってテクスチャマッピングじゃなくて、1本1本リアルタイム生成されて描かれているよ」とうっかり感心してしまったりもする(この辺、共感を覚える方は少なくないはずだ)。


 大ヒット作であるRPG「Diablo」のやりすぎを反省し、公園に頭を冷やしに行った際にも、噴水の周りは、人通りが多くても、なぜか物を盗まれないと言う安心感をついつい抱いてしまい、手持ちの現金や持ち物を重ならないように並べてしまいたい欲望に駆られ、自分が空恐ろしくなった。この状態が悪化したら、無一文のホームレスにもなりかねない。私は慌てて噴水から離れて家路についたが、その帰途に見かけた犬の群に異常な敵意を感じるとともに、街中に置かれた魚屋の樽に対しても、トラップを警戒しつつも破壊して中のアイテムをゲットしたいという欲望をこらえるのに必死であった。


 読者のゲーマーの中にも、壁に妙な出っ張りがあると、つい押してみたくなる方は多いだろう。そして押した後、耳を澄ましている自分を発見し、うろたえたことがあるはずだ。
 あるいは、人にモノを尋ねに行き、
「その話だったら○○に聞いてくれよ!」
と怒られたときに、回り道をしたにも関わらず(普通の人なら腹立たしく思うはずである)、
「よかった、これでフラグが立った」
となぜかほっとしている自分に気づくことがある人も少なくないだろう。


 シューティングゲームが好きな同期などは、駅の雑踏などで、サラリーマン/おばさん/子供/老人などの動き方のパターンをつい分析してしまう癖があるという。サラリーマンは直進型、おばさんはトリッキーな動きを見せるなどと考えつつ、気づくと、あの紙袋に当たり判定はあるのかなどと気づくと考えているらしい。


 それにしても、ゲームをしてる時はなぜあんなに眠くならないんでしょうか。アドレナリン出まくりだからでしょうか。ベイグラントストーリーって、おもしろいんでしょうか。ファミ通でオール10点満点を出したベイグラントって、おもしろいんでしょうか。ファイナルファンタジータクティクスの2って、出ないんでしょうか。Might&Magic日本語版の過去全バージョンがPS2で出ないでしょうか。ローグアライアンスやバーズテイルは? 僕はどうなっちゃったんでしょうか。

自己紹介

編集者 クドー

通称 : クドー

角川グループの出版社・株式会社アスキー・メディアワークス第八編集部 英語&海外文芸課の編集長。1991年5月~2000年12月までパソコン総合雑誌「月刊アスキー」で編集者として働き、ワープロやOfficeなどの記事や「クドーの事件簿」ほかの記事を執筆しながら、日本マーフィー普及委員会の一員として、「マーフィーの法則」支援連載や、『続・マーフィーの法則』刊行などを手がける。2001年より書籍編集者となり、『ドラゴンランス』『ダークエルフ物語』などの海外ファンタジー作品を多数刊行。現在は、『単語耳』シリーズや、『21世紀版 マーフィーの法則』、『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』など、語学系や自己啓発系の書籍も手がける。

編集者 タジマ

通称 : タジマ

アスキー・メディアワークス第八編集部 英語&海外文芸課の編集者。2006年からドラゴンランスなどの海外ファンタジー全般を担当しています。趣味は漫画・ラジオ・アニメ・小説・音楽・映画・ネットと浅く広くをモットーにだいたい通じています(つもりです)。「目指せミリオンヒット!」、そして「D&D小説エバンジェリスト」として青春を編集にささげていく所存です。ちなみに画像は片耳の愛猫ハル。お尻を叩くとなぜか喜びます。

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